アトピー性皮膚炎は、痒みのある湿疹が体や四肢の左右対称にできる慢性的な皮膚疾患で、良くなったり悪くなったりを繰り返します。皮膚症状が、年齢によって変化するのも特徴的です。
アトピー性皮膚炎の原因は、まだはっきりとはわかっていませんが、遺伝的な体質に加え、環境的要因が影響して発症すると考えられています。
多くの患者さんは、皮膚が乾燥しやすい素因(ドライスキン)とアトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)を併せもっています。
アトピー性皮膚炎の治療において一番大切なのは、皮膚を保湿することです。
アトピー性皮膚炎は皮膚が乾燥しやすいため、普段は何ともない刺激でも過敏に反応し、かゆみが出てくることがよくあります。そのため、保湿剤を使い、皮膚を保護することで外部からの刺激を減らすことでき、かゆみを起こしにくい皮膚にすることが大切になってきます。
また、湿疹治療のための塗り薬としては、ステロイドの塗り薬とステロイド以外の免疫抑制薬の塗り薬(免疫抑制外用薬)があります。
ステロイドの塗り薬は、炎症を強く抑える作用を有し、免疫抑制外用薬は、過剰な免疫反応を抑制します。これらの薬剤を適切に使うことで症状を早く改善し、良い状態を維持することが可能になります。
ほかに、痒みを鎮めるために抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬を補助的に用いたり、他の治療でなかなか良くならない重症の成人患者さんでは、ステロイド薬の飲み薬やシクロスポリン(免疫抑制薬)の飲み薬を服用したりすることがあります。
どの薬をどのように組み合わせて、どのくらいの量を使うかは、医師が患者さん個々人の皮膚の状態等をよく診て判断します。
また、当院では紫外線治療も行っています。塗り薬や飲み薬で湿疹のコントロールがなかなか出来にくい、あるいは湿疹の症状が強い患者さんに行うことが多いです。
診察ベッドに寝てもらい、必要な部位に紫外線を照射します。痛みを感じることはありません。
週に一回から二回程度照射を行います。
アトピー性皮膚炎の治療の目標は、この疾患であることをそれ程意識しないで日常生活を送ることができ、また周囲の人にもアトピー性皮膚炎であることがわからないくらいにまで症状を改善し、その状態を維持することです。
ステロイドや免疫抑制外用薬の塗り薬などを適切に使い、スキンケアを上手に行っていけば、多くの人は、この目標を達成できます。定期的に通院していただき、皮膚が一番良い状態を維持できるようにしましょう。
アトピー性皮膚炎の患者さんでは、そもそも皮膚の「バリア機能」が低下しています。
そのため、ステロイド外用薬などを使って炎症を鎮めても、スキンケアを怠れば炎症は簡単にぶり返してしまいます。
皮膚の清潔を保つために入浴、シャワー浴を励行し、低刺激の石けんを用いて優しく軽めに洗います。さらに、いわゆる保湿剤の中から使い心地の良さそうなものを選んで、それを1日2回塗るようにします。
皮膚の炎症を薬で抑えるとともに、併せてスキンケアをきちんと行うことが、アトピー性皮膚炎を治療する上での二本柱と言えます。
通常の治療を行っても、なかなか良くならないケースが時に見受けられます。こうしたアトピー性皮膚炎の治療では、悪化因子を調べ、取り除くことがとても大切です。
まず、アレルギーの原因(アレルゲン)については、年齢により差異があり、乳幼児では食物アレルゲン、それ以降ではダニ、ハウスダストなどの環境的なアレルゲンが関係していることがあります。
しかし、手あたり次第にアレルゲン検査を行って、それだけで判断するのではなく、実際にそれらのアレルゲンによって症状が悪化するかどうかを確認する必要があります。
刺激因子としては、汗で悪化するという方が少なくなく、また、空気の乾燥や、皮膚に触れる様々な物質、精神的なストレスなども悪化因子として見落とせません。