どこに住んでいても、蚊、ダニ、ノミ、ブユ、ハチ、ケムシなどによる虫さされは、日常的によく起こります。
症状の程度も、塗り薬ですぐに治まるものもあれば、点滴治療が必要になるものまでいろいろあります。
虫さされとは、それぞれの虫が持っている物質が、さされたり咬まれたり、血を吸われたり、触れたり(ケムシなどの場合)した際に人間の皮膚内に注入され、それによって赤みや水ぶくれ、痒みや痛みなど様々な症状が起きている状態です。
ハチにさされた後には、血圧の低下や意識の消失など、強いアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が起こることがあり、注意が必要です。
アナフィラキシーショックとは、ハチ毒や薬物、食物などが原因となって極めて短い時間のうちに激しいアレルギー反応が全身に生じ、血圧低下や呼吸困難、意識障害などが起こって生命の危険さえ伴うこともありうる状態を言います。
過去にアナフィラキシーショックを起こしたことがある方、または今後起こす危険性があると思われる方には、緊急時に備えてエピヘン(アドレナリン自己注射)を携帯することをお勧めします。
エピペンは、アナフィラキシーが現れたときに使用し、症状の進行を一時的に緩和してショックを防ぐための補助治療剤です。
虫さされによって生じる皮膚症状には、大きく分けて「痛み」と「痒み」があります。
痛みには、虫が皮膚をさしたり咬んだりすることによる物理的な痛みが一つ、もう一つは皮膚に注入された物質の化学的刺激による痛みです。
痒みは、皮膚に注入された物質(唾液腺物質や毒成分)に対するアレルギー反応によって引き起こされます。
このアレルギー反応には、すぐに起こる「即時型反応」とゆっくり起こる「遅延型反応」があります。
即時型反応は、虫の刺咬を受けた直後から痒みや発赤、じんましんなどが現れるもので、数時間後にそうした症状は軽くなります。
一方の遅延型反応では、虫の刺咬を受けた1~2日後に痒み、発赤、ぶつぶつ、水ぶくれなどが現れ、数日~1週間程度で症状は軽くなります。
これらアレルギー反応の現れ方は、虫にさされた頻度やその人の体質によって個人差が大きいのが特徴です。
皮膚科の治療では、ステロイド軟膏を短期間外用します。
腫れや痒みが強い場合は、抗アレルギー薬、場合によってはステロイド薬の内服が必要になります。
痒いからといって患部を掻き壊すと、とびひ(伝染性膿痂疹)や治りにくい痒疹(痒みのある硬くなった皮膚)となり長期化することがありますので、皮膚科への受診をお勧めします。
皮膚炎などの皮膚症状を引き起こす虫の代表としては、蚊、ノミ、ブユ、ハチ、トコジラミ(南京虫)、アブ、ケムシなどの昆虫類、そしてダニ、クモ、ムカデなどの節足動物が挙げられます。
これらのうち、吸血する虫としては蚊、ブユ、アブ、ノミ、トコジラミ、さす虫としてはハチ、咬む虫としてはクモ、ムカデが代表的で、触れることで皮膚炎を起こす虫としてはケムシが挙げられます。
さされた後に強いアレルギー反応が起こって、全身にじんましんが出たり、気分が悪くなったり、腹痛、意識消失などが生じることはあります。
特に注意が必要なのはハチで、なかには刺されて30分以内にショック症状をきたす特異体質の人がいます。